幹細胞治療は、膝関節の痛みなどに対して新たな選択肢となる一方、脂肪採取や関節内投与に伴う痛み・腫れ・感染などのリスクがあります。大切なのは「危険か安全か」だけで判断せず、起こり得る副作用と安全管理の体制を確認することです。ここでは、幹細胞治療を検討する前に知っておきたいリスクとクリニック選びのポイントを解説します。
幹細胞治療のリスクとして現れる主な症状
【投与経路・部位別】幹細胞治療に伴う主なリスクと注意症状一覧
| 工程・投与経路 | 分類 | 想定される主なリスク・副作用 | 症状の目安と経過 | 速やかに受診すべき警戒症状 |
|---|---|---|---|---|
| 脂肪採取 | 局所反応 | 採取部位の痛む、腫れ、内出血、感染など | 数日〜数週間で自然に落ち着くことが一般的 | 激しい痛みの増強、化膿、持続する発熱 |
| 関節内投与(膝等) | 局所反応 | 注射部位の痛み、関節の腫れ、皮下出血、まれに感染 | 投与後一時的に発生し、数日で軽快することが多い | 急激な関節の熱感・腫れ、歩行困難 |
| 静脈投与(点滴) | 全身反応 | 発熱、投与反応、肺微小循環への集積、血栓・塞栓性事象 | 点滴中〜投与後早期の観察が特に重要 | 呼吸困難、胸痛、急激な血圧変化・体調悪化 |
幹細胞治療では、細胞そのものだけでなく、脂肪の採取や培養、関節への注射、静脈への投与といった各工程で異なるリスクがあります。治療方法によって注意すべき症状も変わるため、まずはどの段階で何が起こり得るのかを分けて理解しておくことが大切です。
脂肪採取に伴うリスク
自己脂肪由来の幹細胞を使用する場合、患者さん自身の脂肪組織を採取する工程があります。そのため、採取部位の出血、皮下出血、疼痛、腫脹、感染などが起こる可能性を完全には否定できません。採取後に一時的な違和感や痛みが続く場合もあります。幹細胞治療というと「細胞を投与する部分」に意識が向きやすいのですが、実際には細胞を準備するための採取も治療の一部です。事前説明では、投与時の副作用だけでなく、脂肪をどのように採取するのか、採取後にどの程度の安静が必要なのか、異常があった際にどう対応するのかまで確認しておきましょう。
関節内投与に伴うリスク
膝などの関節内へ幹細胞を注射する場合、投与後に一時的な疼痛や腫脹が生じることがあります。注射そのものによる痛みや皮下出血が起こる可能性もあり、非常にまれではあるものの、針を介した感染にも注意が必要です。2026年に公表された膝関節症に対する幹細胞治療のメタ解析でも、注射部位の痛みや関節の腫れなどの局所反応が報告されています。一方、重篤な合併症は多くないとされており、リスクを過度に恐れるのではなく、起こり得る反応と受診すべき症状を治療前に把握しておくことが重要です。
静脈投与に伴うリスク
幹細胞を静脈から投与する治療では、発熱などの投与反応に加え、MSCが肺微小循環に集積することや、まれな血栓・塞栓性事象についても安全性上の検討が必要です。静脈投与されたMSCは血流に入りますが、投与後早期には多くが肺の微小血管に集積することが知られています。そのため、関節内への局所投与とはリスクの考え方が異なります。特に呼吸困難、胸痛、急激な体調変化などが生じた場合には、速やかな医学的評価が必要です。静脈投与を検討するときは、「幹細胞だから安全」と考えるのではなく、細胞の品質や投与量、投与方法、緊急時の対応体制まで確認したうえで判断することが欠かせません。
SAクリニックでは、治療前に全身状態や既往歴、服薬状況などを確認するとともに、万が一治療後に高度な医療対応が必要となった場合に備え、地域の高度医療機関と連携できる体制を整えています。こうしたリスクに対応できるクリニックを選ぶことが重要です。
幹細胞治療のリスクが高まる要因
同じ「幹細胞治療」という名称でも、安全性への取り組みは細胞の管理方法、医師の経験、衛生環境、患者さんの健康状態などによって変わります。治療内容だけを見るのではなく、治療を支える一連の管理体制まで確認することが、リスクを考えるうえで重要です。
幹細胞の品質管理が不十分
幹細胞治療では、採取した細胞をどのような環境で培養・管理し、投与前にどのような確認を行っているかが重要になります。細菌などによる汚染を防ぐための衛生管理はもちろん、細胞の状態を適切に確認する体制も欠かせません。SAクリニックでは、凍結保存した細胞ではなく、培養後に凍結を行わない生幹細胞を用いることにこだわっています。ただし、「生幹細胞だから必ず高い治療効果が得られる」と単純に断定できるものではありません。細胞の状態だけでなく、品質管理、患者さんの適応、投与方法まで含めて治療を考える必要があります。
施術を行う医師の経験不足
幹細胞の品質が適切であっても、投与する医師の技術や判断が重要であることに変わりはありません。特に関節内への注射では、患者さんの関節の状態を把握し、適切な位置へ投与することが求められます。また、「幹細胞治療を希望しているから実施する」のではなく、その患者さんに本当に適応があるのかを判断することも医師の重要な役割です。画像所見、痛みの程度、歩行状態、既往歴、これまで受けてきた治療などを確認し、他の治療法も含めて検討できる医師かどうかを確認するとよいでしょう。
施設内の衛生管理の不備
幹細胞治療では、脂肪採取、細胞の取り扱い、注射など複数の工程で感染対策が必要になります。特に細胞を培養する場合、投与されるまでの工程で汚染を防止する管理が欠かせません。また、注射や脂肪採取を行う環境、使用する器具、皮膚の消毒など、一般的な医療行為としての感染対策も重要です。患者さんからは細胞加工の工程が見えにくいからこそ、どのような環境で細胞を管理しているのか、検査を行っているのかなどを説明してもらい、納得してから治療を受けることが大切になります。
患者自身の持病による影響
幹細胞治療のリスクは、治療内容だけで決まるわけではありません。持病、服用している薬、感染症の有無、全身状態などによって、治療の適否や注意点が変わる可能性があります。例えば出血しやすくなる薬を服用している場合には、脂肪採取や注射に伴う出血について慎重な判断が求められることがあります。現在治療中の病気がある方は、自己判断で服薬を中断せず、必ず事前に医師へ伝えてください。再生医療を受けること自体を目的にするのではなく、現在の健康状態を踏まえて治療の優先順位を考えることが重要です。
幹細胞治療のリスクを軽減するための対策
【幹細胞治療のリスクを回避】安心できるクリニック選び 5つの安全管理チェックリスト
- 厚生労働省への計画書提出:「再生医療等安全性確保法」に基づき、リスク区分に応じた提供計画が提出・受理されているか
- 幹細胞治療リスク・限界の説明:良い効果だけでなく、副作用(痛み・腫れ・感染等)や期待通りの効果が得られないリスクも納得いくまで説明があるか
- 厳格な品質・感染管理体制:細胞培養時の細菌汚染リスクを防ぐ衛生管理や検査基準が明確に運用されているか
- 緊急時・アフターケア体制:施術後に症状が悪化するなど急なリスクが発生した際、夜間・休日でも連絡でき、提携医療機関と連携できるか
- トラブル時の補償・対応方針の明示:万が一の副作用や事故が生じた場合の受診方法、費用負担、補償制度の有無が事前提示されているか
幹細胞治療のリスクをゼロにすることはできませんが、治療前の確認によって避けられる問題はあります。特に確認したいのは、法令に基づいた手続き、十分な説明、治療後の対応体制です。「どんな効果が期待できるか」と同じくらい、「問題が起きたときどうするか」を確認しましょう。
厚生労働省に届出済みのクリニックを選ぶ
日本で再生医療等を提供する場合、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づいた手続きが必要です。再生医療等提供計画は、リスク区分に応じて認定再生医療等委員会などによる審査を経たうえで、厚生労働大臣または地方厚生局長へ提出する仕組みとなっています。提供計画を提出せずに対象となる再生医療等を提供することは法律違反です。クリニックを選ぶ際には、価格や症例写真だけではなく、受けようとしている治療について必要な提供計画が提出されているかを確認することが、基本的なチェックポイントになります。
事前のカウンセリングで疑問を解消する
治療前には、期待できる効果だけでなく、効果が十分に得られない可能性、副作用、費用、治療後の経過まで確認しましょう。「何回受ければ治りますか」「必ず軟骨が再生しますか」といった質問に対して、断定的な回答だけをするのではなく、現在わかっていることと不確かなことを分けて説明してくれるかも判断材料です。膝関節症に対する幹細胞治療は研究が進んでいる一方、治療方法や細胞の種類などには違いがあり、効果には個人差があります。メリットと限界の両方を聞いたうえで決めることが、後悔を減らすことにつながります。
施術後のアフターケア体制を確認する
安全性を考えるうえでは、治療を受ける当日だけでなく、その後の対応まで確認する必要があります。脂肪採取部位が強く腫れた、関節の痛みが急激に増した、発熱したなどの変化が起きた際に、どこへ連絡すればよいのかを事前に聞いておきましょう。また、治療後の診察や経過観察がどのように行われるかも大切です。幹細胞を投与して終わりではなく、症状や歩行状態などを継続して評価できる体制があれば、異常の早期発見だけでなく、治療効果を冷静に判断しやすくなります。
幹細胞治療のリスクに関するよくある質問
幹細胞治療を検討する患者さんからは、「がん化しないのか」「トラブル時の補償はあるのか」「効果がなかったらどうするのか」といった疑問が多く聞かれます。ここでは、治療を決める前に確認しておきたい代表的な疑問について整理します。
投与した細胞ががん化する心配はある?
幹細胞と聞くと、「体内で増殖してがんになるのでは」と不安になる方もいるでしょう。間葉系幹細胞については腫瘍形成リスクに関する研究や安全性評価が続けられており、臨床利用に際しては細胞の種類、培養方法、遺伝的安定性などを含めた品質管理が重要とされています。少なくとも「絶対にがん化しない」と言い切って治療を選ぶのではなく、どのような細胞を使用し、どのように培養・検査しているのかを確認する姿勢が大切です。長期的な安全性についても研究が継続している領域であることを理解しておきましょう。
万が一トラブルが起きた場合の補償はある?
補償の内容は医療機関や治療計画によって異なるため、治療前に個別の確認が必要です。重要なのは、「何かあれば対応します」という説明だけで終わらせないこと。副作用が起きた場合の診察方法、夜間や休診日の連絡先、他院での治療が必要になった場合の対応、費用負担や補償制度の有無などを確認しておくと安心です。また、再生医療等安全性確保法では、再生医療等を提供する医療機関に疾病等の発生状況などについて報告を求める仕組みがあります。万が一を想定した説明が十分に行われているかも、クリニック選びの判断材料になります。
効果を感じられない場合もリスクと言える?
医学的な副作用とは異なりますが、期待した効果を得られない可能性は治療を選択するうえで考えるべき重要な要素です。特に自由診療では経済的な負担も伴うため、「効果が保証されているわけではない」という点を理解する必要があります。膝関節症への幹細胞治療については、痛みや機能改善を示した研究がある一方、研究によって結果に差があり、画像上の構造改善についても一貫した結論が得られているわけではありません。費用だけで判断せず、自分の症状でどの程度の改善を目標とするのかを医師と共有したうえで検討しましょう。
幹細胞治療のリスクを正しく理解して納得できる判断をしよう
幹細胞治療には、脂肪採取に伴う出血・疼痛・腫脹・感染、関節内投与後の痛みや腫れ、静脈投与に伴う全身反応など、治療工程ごとに異なるリスクがあります。一方で、「リスクがある=危険な治療」と単純に考える必要もありません。
大切なのは、どのような副作用がどの程度想定され、それに対して医療機関がどのような対策を取っているのかを確認することです。
特に幹細胞治療では、患者さんから見える注射や点滴だけでなく、細胞を採取し、培養・管理し、投与するまでの工程があります。そのため、使用する細胞の品質管理、感染対策、医師による適応判断、治療後のフォローまで含めて評価しなければなりません。
また、治療効果について過度な期待を持たないことも重要です。膝関節症に対する幹細胞治療では、痛みや機能の改善を示す研究が報告されていますが、患者さん全員に同じ結果が得られるわけではありません。近年の研究でも、局所的な痛みや腫れなどの有害事象が報告される一方、重篤な合併症は多くないとされています。ただし、研究ごとに使用する細胞や治療方法が異なるため、ひとまとめに評価することには注意が必要でしょう。
「最新の治療だから受ける」「手術を避けたいからすぐに決める」という選び方ではなく、現在の膝の状態とこれまでの治療経過を確認し、そのうえで幹細胞治療が選択肢になるのかを考えることが大切です。
治療前には、少なくとも「自分は適応なのか」「どのような細胞を使うのか」「どんな副作用があるのか」「効果がなかった場合はどうするのか」「異常が起きたときにどのような対応を受けられるのか」を確認してください。
十分な説明を受け、それでも納得できない点があれば、その場で治療を決める必要はありません。メリットだけでなくリスクや限界まで理解し、自分が納得できる治療を選ぶことが、幹細胞治療で後悔しないための第一歩です。
ご相談・お問合せ
SAクリニックでは、膝関節の状態やこれまでの治療経過を確認し、歩行回復プログラムから幹細胞注射まで一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案しています。
注射を続けても膝の痛みが改善しない方、手術以外の治療を検討したい方、幹細胞治療についてメリットだけでなくリスクも含めて説明を受けたい方は、一度ご相談ください。
幹細胞治療を受けることを前提とするのではなく、現在の痛みや関節の状態、歩行機能、これまで受けてきた治療などを確認したうえで、どのような選択肢が考えられるのかを一緒に検討します。
「幹細胞治療に興味はあるけれど、副作用が心配」「自分の膝に適応があるのかわからない」という段階でも問題ありません。治療を決める前だからこそ、疑問や不安を整理しておくことが重要です。
※当院の診療は自由診療です。治療効果には個人差があり、すべての患者さんに同様の効果を保証するものではありません。治療には疼痛、腫脹、感染などのリスクがあり、患者さんの状態によって適応とならない場合があります。
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https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/plan.html
宮路 啓太 (みやじ けいた)
略歴
- 2013年私立ラ・サール高等学校 卒業
- 2019年神戸大学医学部医学科 卒業 / 加古川中央市民病院 初期臨床研修
- 2021年加古川中央市民病院 循環器内科
- 2024年隠岐医院 漢方内科 / 再生医療専門クリニックにて幹細胞治療に従事
- 2026年SAクリニック 院長
資格・所属学会
【資格】 医師免許(2019年取得) / 内科専門医
【所属学会】 日本内科学会、日本循環器学会、日本整形外科学会、日本抗加齢医学会、日本再生医療学会
監修者メッセージ
再生医療・内科・漢方の経験を融合し、単に痛みを抑えるだけでなく、全身のコンディションを整えて「生涯ずっと自分の足で歩き続ける」ための医療をご提案します。長引くお悩みも諦めずにご相談ください。

