膝の幹細胞治療は、自身の脂肪などから採取・培養した幹細胞を膝関節へ投与し、痛みや炎症の軽減、関節機能の改善を目指す再生医療です。軟骨への影響も研究されていますが、効果の現れ方や持続期間には個人差があります。幹細胞治療で期待される効果や実感しやすい時期、治療後の過ごし方、効果を感じにくいケースまで詳しく解説します。
幹細胞治療の効果とは?膝関節における影響を解説
膝関節に対する幹細胞治療では、変形性膝関節症などによって生じる痛みや炎症を抑え、関節機能の改善を目指します。さらに、幹細胞が分泌するさまざまな因子による組織修復への作用も研究されてきました。ここでは、膝軟骨や炎症、変形性膝関節症への主な影響を解説します。
| 比較項目 | ヒアルロン酸注射 | 幹細胞治療(再生医療) | 人工膝関節置換術 |
|---|---|---|---|
| 治療の目的・作用 | 関節内の潤滑・補給による一時的なクッション性の向上と疼痛緩和。 | 抗炎症作用・組織修復の促進により、関節内環境を整え痛みを軽減。 | 痛みの原因となっている変形した骨・軟骨を切除し、人工関節へ全置換。 |
| 期待できる効果と持続期間 | 即効性はあるが持続期間は数日〜数週間。定期的な継続投与が必要。 | 1年以上の長期的な改善効果が報告されており、進行抑制作用も期待。 | 膝の痛みが根本的に解消され、15〜20年以上の長期的な効果が持続。 |
| 身体への負担・体の負担 | 非常に低い(外来での注射のみ)。 | 低い(日帰り可能な採血・脂肪採取および関節内注射のみ)。 | 高い(数週間の入院、全身/脊髄麻酔、切開手術、リハビリが必要)。 |
| 軟骨・関節組織への影響 | すり減った軟骨そのものを修復・再生させる作用はない。 | 幹細胞の分泌因子により、軟骨環境の改善や組織修復を促す。 | 自分の軟骨や骨は取り除かれ、金属やポリエチレン製の人工物に置き換わる。 |
| 対象となる膝の進行度 | 初期〜中度の変形性膝関節症。 | 初期〜重度手前(ある程度軟骨が残っている状態が最適)。 | 軟骨が完全に消失した重度・末期の変形性膝関節症。 |
すり減った膝軟骨の再生と修復
変形性膝関節症では、関節の表面を覆う軟骨が徐々にすり減り、関節の隙間が狭くなることで痛みや動かしにくさが現れます。間葉系幹細胞には軟骨などの組織へ分化する能力があるほか、増殖因子やサイトカインを分泌し、組織修復に適した環境を整える働きが期待されているのです。
実際に、一部の臨床研究では幹細胞を膝関節内へ投与した後、MRIで軟骨の厚さや体積などに変化が確認されています。ただし、「失われた軟骨が治療前と同じ状態まで完全に再生する」と保証できる治療ではありません。軟骨への影響には個人差があり、変形の程度や年齢、膝の状態などを踏まえて治療適応を判断する必要があります。
炎症への作用と痛みの軽減
膝の痛みは、単純に軟骨がすり減っていることだけで生じるわけではありません。変形性膝関節症では、関節を包む滑膜などに炎症が起こり、痛みや腫れにつながる場合があります。
間葉系幹細胞は、さまざまな生理活性物質を分泌することで、関節内の炎症反応を調整する作用が期待されています。その結果として痛みが軽減し、「歩く」「立ち上がる」「階段を上り下りする」といった日常動作が行いやすくなる可能性があります。
臨床研究でも、VASやWOMACなどの評価指標を用いた検討で、治療後に疼痛や関節機能が改善した例が報告されています。一方、すべての方に同程度の鎮痛効果が現れるわけではなく、効果の程度や現れる時期には差があります。
変形性膝関節症の進行予防
変形性膝関節症は、軟骨の摩耗や炎症、筋力低下、関節への過剰な負荷などが複雑に関係しながら進行します。幹細胞治療では痛みを一時的に抑えるだけではなく、炎症を調整し、関節内の環境を改善することで症状や構造変化へ働きかける可能性が研究されています。
近年の研究では、MRIを用いて治療後の軟骨を評価し、変形性膝関節症の構造的な進行を抑える可能性を示した報告もあります。
ただし、幹細胞治療を受ければ変形性膝関節症の進行を確実に止められるわけではありません。膝への負担を抑える体重管理や筋力維持、運動療法なども含めて総合的に取り組むことが重要です。
幹細胞治療の効果が現れる期間・時期はいつから?
幹細胞治療は、局所麻酔薬のように投与直後から一定の効果が完成する治療ではありません。投与された細胞やそこから分泌される因子が関節内の環境へ働きかけるため、数週間から数ヶ月かけて変化を感じることがあります。治療後の経過を時期ごとに確認していきましょう。
| 経過時期 | 膝の状態・期待できる効果の変化 | 過ごし方・注意点 |
|---|---|---|
| 投与直後〜1ヶ月 | 注射刺激による過渡的な腫れや違和感が治まり始めます。1ヶ月頃から徐々に痛みの軽減などの効果を感じ始める方もいます。 | 激しい運動や自己判断での過度な負荷を避け、安静を優先して過敏な反応を防ぎます。 |
| 3ヶ月〜6ヶ月 (効果実感期) |
関節内の炎症が調整され、歩行時や階段の昇降時の痛みの改善、関節機能の向上など幹細胞治療の効果を最も実感しやすい時期です。 | 医師・理学療法士の指導のもと、膝を支える大腿四頭筋などのリハビリ・筋トレを開始します。 |
| 1年以降 (長期維持期) |
多くのケースで痛みや関節機能の改善効果が持続します。変形性膝関節症の構造的な進行を抑える影響も期待されます。 | 適正体重の維持と定期的な運動を習慣化し、再発を防ぎながら良好な膝状態を維持します。 |
投与直後から1ヶ月前後の変化
幹細胞を膝関節内へ投与した直後は、注射による刺激によって一時的な痛みや腫れ、熱感などが現れる場合があります。そのため、投与直後の状態だけで治療効果を判断することは適切ではありません。
その後、数週間から1ヶ月程度の間に「以前より歩きやすい」「膝の痛みが少し気にならなくなった」といった変化を感じる方もいます。ただし、治療直後から明確な改善が現れるとは限りません。
幹細胞治療では、短期間の変化だけを見るのではなく、医師による診察や疼痛評価、関節機能などを確認しながら経過を追うことが大切です。
3ヶ月から6ヶ月目の効果実感
膝の幹細胞治療では、投与後3〜6ヶ月頃が一つの評価時期になります。ランダム化比較試験やメタ解析では、治療後3ヶ月以降に疼痛スコアが改善した研究があり、6ヶ月時点でWOMACなどの指標が改善した報告もあります。
日常生活では、歩行時の痛みや階段の上り下り、立ち上がりなどの動作に変化を感じるケースがあります。
ただし、「3ヶ月経てば必ず効果が出る」という意味ではありません。変形性膝関節症の進行度、投与する細胞の種類や数、年齢、筋力、活動量などによって経過は異なります。画像所見だけでなく、痛みや生活上の困りごとがどう変化したかも含めて評価します。
1年以上持続する長期的な影響
幹細胞治療の効果がどの程度持続するかについては研究が続いています。複数の臨床研究では、治療後12ヶ月の時点でも痛みや関節機能の改善が確認されており、さらに長期間追跡した報告も存在します。
一方で、幹細胞治療による効果が永久に続くとは限りません。変形性膝関節症は加齢や体重、活動量、筋力などの影響を受ける慢性的な疾患だからです。
治療によって症状が改善しても、膝へ強い負担をかけ続ければ再び症状が強くなる可能性があります。長期的な状態維持を目指すには、治療後もリハビリや運動、体重管理などを継続することが重要になります。
膝の幹細胞治療の効果を高めるポイント
幹細胞治療を受けた後は、治療そのものだけに頼るのではなく、膝を支える筋肉や体重、日常生活での負荷にも目を向ける必要があります。関節に過度な負担をかけない環境を整えながら、適切に身体を動かすことが大切です。治療後に意識したい3つのポイントを確認します。
施術後の適切なリハビリテーション
膝の痛みが続くと、無意識に患側をかばうようになり、太ももの筋肉をはじめとする膝周囲の筋力が低下しやすくなります。筋力が落ちれば関節への負担が増え、さらに動きにくくなるという悪循環につながりかねません。
幹細胞治療後も、医師や理学療法士などの指示に沿って適切な運動療法を行い、膝を支える筋肉を維持することが重要です。
ただし、早く改善したいからといって自己判断で激しい運動を始めるのは避けましょう。治療直後の運動量や再開時期は膝の状態によって異なるため、段階的に負荷を調整する必要があります。
膝関節への負担を減らす体重管理
膝関節は、立つ、歩く、階段を上るといった日常動作のたびに体重による負荷を受けています。体重が増えるほど膝への機械的な負担も大きくなりやすいため、適正体重を維持することは変形性膝関節症の管理において重要です。
特に体重過多がある場合は、食事と無理のない運動を組み合わせて体重を調整することで、膝への負担軽減につながります。
極端な食事制限は筋肉量の低下を招く可能性があるため注意が必要です。膝を支える筋力を保ちながら、継続できる方法で体重管理を進めることが望まれます。
適切な治療タイミングの把握
幹細胞治療は、変形性膝関節症であれば進行度に関係なく同じ結果が期待できるわけではありません。軟骨がある程度残っている段階と、関節の変形が著しく進行している段階では治療後の経過が異なる可能性があります。
過去の系統的レビューでも、比較的早い変性段階の患者で良好な結果が報告されています。
ヒアルロン酸注射や運動療法などを続けても十分な改善が得られない場合には、現在の膝の状態を画像検査などで確認し、どの治療が適しているのかを検討することが大切です。幹細胞治療だけでなく、保存療法や手術を含めた選択肢を比較したうえで判断します。
膝の幹細胞治療の効果を感じにくいケース
幹細胞治療には痛みや関節機能の改善が期待される一方、すべての患者さんに同じ結果が得られるわけではありません。膝関節の変形が進んでいる場合や、治療後も大きな負荷が続いている場合などでは、十分な変化を感じにくい可能性があります。代表的なケースを解説します。
膝関節の変形が極度に進んでいる場合
変形性膝関節症が高度に進行し、軟骨が広範囲に失われて骨同士が接するような状態では、幹細胞治療だけで十分な症状改善を得ることが難しい場合があります。
強いO脚・X脚などの変形があると、膝関節の一部分へ継続的に大きな負荷がかかるため、関節内の環境へ働きかける治療だけでは原因を十分に解消できないこともあります。
高度な変形がある場合には、再生医療が適しているかを慎重に判断しなければなりません。状態によっては骨切り術や人工膝関節置換術などが治療候補になるため、画像所見と症状を踏まえた総合的な診断が必要です。
術後のリハビリを怠ってしまう場合
幹細胞治療を受けたからといって、膝を支える筋肉が自動的に強くなるわけではありません。長期間の膝痛によって太ももの筋力が低下している場合、治療後も筋力不足が残れば、歩行時などに膝へ負担がかかりやすい状態が続きます。
反対に、安静にしすぎることで筋力や関節可動域が低下する可能性もあります。
大切なのは「動かさないこと」ではなく、膝の状態に応じて適切な負荷を与えることです。治療後の経過を確認しながらリハビリを行い、筋力や柔軟性、歩行動作を整えていくことが、その後の生活を支えるポイントになります。
医師の指示に従わない生活習慣
治療後すぐに激しいスポーツへ復帰したり、痛みを我慢して長時間歩き続けたりすると、膝関節へ過剰な負荷がかかる可能性があります。また、体重増加や運動不足が続けば、治療後も変形性膝関節症を悪化させる要因が残ってしまいます。
幹細胞治療は、日常生活上の負荷をすべて帳消しにする治療ではありません。
医師から運動制限やリハビリ、生活上の注意について説明を受けた場合は、その内容を守ることが大切です。痛みが改善した時期ほど急激に活動量を増やさず、膝の状態を確認しながら段階的に日常生活へ戻していきましょう。
幹細胞治療の効果に関するよくある質問
幹細胞治療を検討するときには、「効果は何年続くのか」「年齢が高くても受けられるのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。治療効果には個人差があり、年齢だけで判断できない点にも注意が必要です。膝の幹細胞治療について寄せられる代表的な疑問に回答します。
効果は永久に続きますか?
幹細胞治療の効果が永久に続くとは限りません。研究では12ヶ月以上にわたって痛みや関節機能の改善が確認された例があり、数年間の長期経過を調べた報告もありますが、持続期間には個人差があります。
変形性膝関節症は、加齢や体重、関節の形状、活動量などの影響を受けながら進行する疾患です。治療後に症状が改善しても、時間の経過とともに再び痛みが生じる可能性があります。
長期的な状態維持には、リハビリや筋力維持、体重管理などを継続し、定期的に膝の状態を確認することが大切です。
高齢でも十分な効果は期待できますか?
年齢だけを理由に幹細胞治療の効果がないと判断することはできません。実際の治療適応では年齢だけでなく、変形性膝関節症の進行度、軟骨の残存状態、痛みの程度、基礎疾患、日常生活の活動性などを総合的に確認します。
一方、加齢に伴って軟骨の損傷や関節変形が高度になっている場合には、期待できる効果が限定される可能性があります。
「高齢だから受けられない」「若ければ必ず効果が高い」と単純に考えるのではなく、画像検査と診察を受け、自分の膝が再生医療に適した状態なのかを確認することが重要です。
効果を実感できない場合はどうすればよいですか?
治療後すぐに痛みが変わらなくても、直ちに「幹細胞治療が効かなかった」と判断する必要はありません。変化が現れるまで数ヶ月を要するケースもあるため、一定期間は経過を確認します。
それでも症状が改善しない場合は、痛みの原因を改めて評価することが重要です。半月板損傷や靱帯の問題、強い関節変形など、別の要因が関係している可能性もあります。
リハビリの内容や生活習慣を見直すほか、必要に応じて他の保存療法や手術を含めた治療方針を検討します。追加の幹細胞投与を自己判断で決めず、医師と相談しながら次の治療を選択しましょう。
幹細胞治療の効果を正しく理解して納得のいく膝関節治療を選ぼう
膝関節への幹細胞治療では、炎症や痛みの軽減、関節機能の改善などが期待され、軟骨の構造的変化についても研究が進められています。特に変形性膝関節症に対する間葉系幹細胞の関節内投与では、治療後3〜12ヶ月にわたって疼痛や機能の改善が報告された臨床研究があります。
一方で、幹細胞治療は「すり減った軟骨を必ず元通りにする治療」ではありません。効果が現れる時期や程度、持続期間には個人差があり、膝の変形が高度な場合には十分な改善が得られない可能性もあります。
また、痛みが軽くなったとしても、膝に負担をかける原因そのものがなくなるとは限りません。筋力低下や体重増加、歩行動作などを改善しなければ、再び膝への負担が大きくなることがあります。
幹細胞治療を検討するときは、「幹細胞を入れれば治る」というイメージだけで判断せず、現在の変形性膝関節症の進行度や治療歴、生活上の希望まで含めて適応を確認することが大切です。保存療法や手術療法なども含め、それぞれのメリットと限界を理解したうえで納得できる治療方法を選択しましょう。
ご相談・お問合せ
SAクリニックでは、膝関節の状態を確認したうえで、歩行回復プログラムからPRP・PDF-FDなどの再生医療、自己脂肪由来幹細胞治療まで、患者さんの状態に応じた膝関節治療をご提案しています。
ヒアルロン酸注射などを続けても膝の痛みが改善しない方、できる限り手術以外の方法を検討したい方、幹細胞治療でどの程度の効果が期待できるのか知りたい方は、一度ご相談ください。
治療を受けることを前提とするのではなく、現在の膝関節や軟骨の状態を確認し、幹細胞治療が適しているのか、ほかにどのような選択肢があるのかを一緒に検討します。
※当院の再生医療を含む診療は自由診療です。治療効果や効果が現れる時期、持続期間には個人差があり、すべての患者さんに同様の効果や軟骨の再生を保証するものではありません。
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医薬品医療機器総合機構(PMDA)「再生医療等製品」
https://www.pmda.go.jp/
宮路 啓太 (みやじ けいた)
略歴
- 2013年私立ラ・サール高等学校 卒業
- 2019年神戸大学医学部医学科 卒業 / 加古川中央市民病院 初期臨床研修
- 2021年加古川中央市民病院 循環器内科
- 2024年隠岐医院 漢方内科 / 再生医療専門クリニックにて幹細胞治療に従事
- 2026年SAクリニック 院長
資格・所属学会
【資格】 医師免許(2019年取得) / 内科専門医
【所属学会】 日本内科学会、日本循環器学会、日本整形外科学会、日本抗加齢医学会、日本再生医療学会
監修者メッセージ
再生医療・内科・漢方の経験を融合し、単に痛みを抑えるだけでなく、全身のコンディションを整えて「生涯ずっと自分の足で歩き続ける」ための医療をご提案します。長引くお悩みも諦めずにご相談ください。

