変形性膝関節症は、一度傷んだ関節を完全に元の状態へ戻すことが難しい病気です。しかし、「治らない=何もできない」という意味ではありません。痛みを抑え、膝の機能を保ちながら生活するための治療には複数の選択肢があります。ここでは、変形性膝関節症が治らないと言われる理由から従来治療、再生医療の特徴まで詳しく解説します。
変形性膝関節症が治らないと言われるのはなぜ?
変形性膝関節症は、関節軟骨だけでなく、骨や滑膜など膝関節全体に変化が生じる病気です。そのため、単純に「すり減った軟骨を戻せば治る」とはいえません。ここでは、変形性膝関節症が完治しにくいとされる主な理由を解説します。
| 治らないとされる主な理由 | 膝関節内で生じている問題 | 医療で目指す現実的な治療目標 |
|---|---|---|
| すり減った軟骨が自然に再生しにくい | 軟骨には血管がほとんどなく、損傷部位に修復に必要な細胞や栄養が届かない。 |
痛みの緩和・炎症の調整 (残された軟骨機能の維持と痛みの軽減) |
| 加齢とともに骨の変形が進む | 関節の隙間が狭くなり、骨棘(トゲ状の突起)が形成されて骨自体の形が変化する。 |
進行の抑制・関節機能の保持 (変形スピードを遅らせ、日常生活動作を確保) |
| 日常動作で常に体重や負荷がかかる | 歩行や立ち上がり、筋力低下や脚のアライメント影響で膝の一部に負荷が集中する。 |
膝へかかる負担の分散・運動機能維持 (筋力トレーニングや生活習慣の見直しによる除痛) |
※変形性膝関節症は「完全な完治(元の状態への再生)」は難しい病気ですが、適切な治療と管理を行うことで痛みを最小限に抑え、快適に歩行できる生活を目指すことが可能です。
一度減った軟骨が自然に再生しにくいため
膝関節の骨の表面は、関節軟骨という滑らかな組織で覆われています。軟骨には血管がほとんどなく、損傷した際に修復に必要な細胞や栄養が届きにくいため、一度大きく傷んだ軟骨が自然に元通りになることは困難です。変形性膝関節症が進行すると軟骨の摩耗だけでなく、骨や滑膜などにも変化が生じます。そのため治療では、完全な軟骨再生だけを目標とするのではなく、痛みを軽減し、膝の機能や日常生活を維持することも重要になります。
加齢に伴い骨の変形が進行しやすいため
変形性膝関節症では、軟骨が傷むだけでなく、その下にある骨にも徐々に変化が起こります。進行すると関節の隙間が狭くなったり、骨棘と呼ばれる骨の突起が形成されたりすることもあります。こうした変化が進んだ状態では、薬や注射だけで骨の形そのものを元の状態に戻すことはできません。また、年齢とともに筋力が低下すると膝を支える力も弱くなるため、関節にかかる負担が増える場合があります。症状だけでなく、膝全体の状態を確認することが大切です。
日常の動作で膝に大きな負担がかかるため
膝は歩行や階段、立ち上がりなど、毎日の生活で繰り返し使われる関節です。さらに体重の増加、O脚・X脚などのアライメント(脚の並び方)、太ももやお尻周辺の筋力低下などが重なると、膝の一部分に負荷が集中しやすくなります。痛みを抑える治療を行っても、こうした負担が続けば症状が再び現れる可能性があります。そのため、治療では膝だけを見るのではなく、体重管理や筋力、歩き方、生活動作まで含めて負担を調整することが重要です。
変形性膝関節症が治らないと感じた時の従来治療法
変形性膝関節症では、症状や進行度に応じて薬物療法、関節内注射、運動療法などの保存療法が行われます。これらは軟骨を完全に元へ戻す治療ではありませんが、痛みを軽減して日常生活を維持するための重要な選択肢です。
痛みを和らげる薬物療法
膝の痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの薬が使用されることがあります。炎症や痛みを抑えることで、歩行や運動を行いやすくすることが目的です。ただし、薬物療法は変形した骨や傷んだ軟骨そのものを元に戻す治療ではありません。また、薬の種類によっては胃腸障害、腎機能への影響、心血管系への影響などに注意が必要です。年齢や持病、服用している薬を確認しながら、医師の管理下で適切に使用する必要があります。
関節の滑りを良くするヒアルロン酸注射
ヒアルロン酸は関節液にも含まれている成分で、膝関節内へ注射することで関節の動きを滑らかにし、痛みの軽減を図ります。保存療法の一つとして行われていますが、効果の程度や持続期間には個人差があります。注射を繰り返しても以前ほど効果を感じられなくなった場合は、漫然と継続するのではなく、変形の進行度や痛みの原因をあらためて評価することが大切です。そのうえで運動療法やほかの治療方法を含め、今後の方針を検討します。
筋力を維持・強化する運動療法
運動療法は、変形性膝関節症の治療において重要な役割を持ちます。特に太ももの前側にある大腿四頭筋や股関節周囲の筋肉を適切に鍛えることで、膝を支える力を高め、日常動作でかかる負担を軽減することが期待できます。一方、痛みを我慢して強い運動を続ければよいわけではありません。症状や筋力、関節の動きに合わせて運動量を調整し、必要に応じて体重管理や歩行動作の改善などを組み合わせることが重要となります。
変形性膝関節症は治らないと言われた方に選ばれている再生医療とは?
| 比較項目 | 保存療法 (内服・ヒアルロン酸・運動) |
再生医療 (PRP療法・幹細胞治療) |
人工関節置換術 (全置換・単顆置換) |
|---|---|---|---|
| 治療の概要 | 薬や注射で対症療法的に痛みを緩和し、運動で膝周辺の筋肉を強化する | 自身の血液や細胞を活用し、関節内の炎症調整と組織修復力に働きかける | すり減り変形した骨や軟骨を切除し、金属や人工物でできた関節に置き換える |
| 保険適用と費用 | 公的保険が適用比較的低費用で継続可能 | 自由診療(全額自己負担)クリニックごとに費用が異なる | 公的保険が適用高額療養費制度の対象となる |
| 身体への負担・入院 | 極めて少ない通院のみ(入院不要) | 少ない〜中程度原則日帰り(採血や細胞採取+関節注射) | 大きい(手術が必要)リハビリを含め数週間〜1ヶ月程度の入院 |
| メリット・期待効果 | 手軽に始められ身体への安全性が高い。痛みを管理しながら日常生活を維持 | 切らずに長引く痛みの軽減を目指せる。手術回避・先送りの選択肢となる | 極度に変形が進行した場合でも、劇的な痛み改善と歩行機能回復が期待できる |
| 限界と注意点 | 傷んだ軟骨や変形骨そのものは修復されず、進行すると効果が薄れる場合がある | 軟骨を完全に元通り(完治)にするわけではなく、効果に個人差が存在する | 感染症や可動域制限、違和感の残存、将来の再置換といった外科的リスクがある |
| このような方へ | 発症初期で痛みが軽度な方、身体へ負荷をかけずに経過を見たい方 | 保存療法で痛みが改善せず「治らない」と感じるが、手術は避けたい方 | 変形が極度に進行し、日常生活の歩行や動作に深刻な支障が出ている方 |
※変形性膝関節症は「完治(元通りの軟骨に戻る)」が難しい病気ですが、段階や生活スタイルに合わせた適切な治療法を選択することで、痛みをコントロールし日常生活の質(QOL)を大きく向上させることができます。
保存療法を続けても痛みが残る一方、手術には抵抗がある方に検討される選択肢の一つが再生医療です。ただし、現時点では「軟骨を完全に再生させて変形性膝関節症を完治させる治療」ではありません。その特徴を正しく理解して検討する必要があります。
自身の組織を活用する幹細胞治療
幹細胞治療では、患者さん自身の脂肪などから採取した細胞を培養し、膝関節内へ投与する方法があります。幹細胞そのものが失われた軟骨を完全に作り直すという単純な仕組みではなく、細胞が放出するさまざまな物質による炎症の調整などを通じ、痛みや関節機能の改善を目指します。臨床研究では疼痛や機能の改善を示した報告がある一方、治療方法や細胞の調製法には違いがあり、長期的な有効性や構造改善については研究が続いています。
血液成分を利用して炎症を抑えるPRP療法
PRP療法は、患者さん自身の血液を採取し、血小板を多く含む成分を抽出して膝関節へ注射する治療です。血小板から放出される成長因子などの働きを利用し、関節内の炎症を調整して痛みや機能の改善を目指します。自分の血液を利用できることが特徴ですが、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。研究によって結果にはばらつきがあり、プラセボとの比較で明確な優位性を示さなかった臨床試験もあるため、適応を確認したうえで検討することが重要です。
手術を回避して痛みの軽減を目指す仕組み
再生医療を検討する目的の一つは、手術をすぐに選択せず、膝の痛みや機能低下に対して治療を行うことです。ただし、「再生医療を受ければ必ず人工関節手術を回避できる」という意味ではありません。骨の変形が強く、歩行や日常生活への支障が大きい場合には手術が適していることもあります。重要なのは手術か再生医療かを最初から二者択一にすることではなく、画像所見、症状、年齢、活動量、希望などを確認し、自分に適した選択肢を考えることです。
変形性膝関節症が治らない場合の再生医療のメリット
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ヒアルロン酸注射や飲み薬を長期間続けているが、膝の痛みが改善しにくくなってきた
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「変形性膝関節症は完治しない(治らない)」と説明を受けたが、痛みを軽減して普通に歩きたい
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仕事や家庭の事情により、長期間の入院やリハビリが必要な人工関節手術を選択するのが難しい
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「膝を切る手術」を受ける前に、自分の血液や細胞を活用した負担の少ない治療法を試したい
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完治(元の軟骨への完全再生)ではなく、痛みを抑えて旅行や趣味などの日常生活(QOL)を維持したい
再生医療には、手術とは異なる方法で膝の痛みや機能改善を目指せるという特徴があります。一方で、効果には個人差があり、適応の見極めも欠かせません。ここでは、変形性膝関節症に対する再生医療を検討する際に知っておきたい主なメリットを解説します。
身体への負担が少ない日帰り治療が可能
PRP療法や関節内への幹細胞投与は、人工関節置換術などの手術と比べて身体への負担を抑えやすく、治療内容や全身状態によっては日帰りで行える場合があります。長期間の入院が難しい方や、仕事・家庭の事情から手術をすぐには選択できない方にとって検討しやすい点の一つです。ただし、幹細胞治療では細胞を採取する処置なども必要となり、負担がまったくないわけではありません。治療前には採取方法や投与方法、治療後の注意点まで確認しましょう。
自分の細胞を使うため副作用のリスクが低い
自己血を用いるPRP療法や自家細胞を用いる幹細胞治療では、自分自身の血液・細胞を利用するため、他人由来の組織を使用する治療とは異なる安全面の特徴があります。しかし、「自分の細胞だから副作用が起こらない」というわけではありません。注射後の痛み、腫れ、熱感などが起こることがあり、細胞を採取する治療では採取部位にも負担が生じます。感染などの可能性も含め、期待できる効果だけでなくリスクについて十分な説明を受けることが重要です。
メスを入れずに長引く痛みの改善が期待できる
再生医療では、膝関節そのものを人工物へ置き換える手術を行わず、注射を中心とした治療によって痛みや機能の改善を目指せます。幹細胞を用いた治療では、一定期間の疼痛や機能改善を示す研究報告があります。ただし、現在の研究では画像上の軟骨や関節構造が一貫して改善することまでは確認されていません。したがって、「膝が元通りになる治療」ではなく、症状を改善しながら自分の膝で生活を続けるための選択肢として考えることが適切です。
変形性膝関節症が治らない症状に関するよくある質問
変形性膝関節症の再生医療を検討する際には、費用や年齢、効果が現れるまでの期間などについて疑問を持つ方が少なくありません。ここでは、受診前に知っておきたい代表的な疑問について回答します。
再生医療の治療に保険は適用されますか?
変形性膝関節症に対して行うPRP療法や幹細胞治療は、一般的に自由診療として実施されるため、公的医療保険は適用されません。そのため、診察や検査、細胞の採取・培養、注射などに必要な費用は原則として自己負担となります。治療内容によって必要な処置や費用は異なるため、事前に総額や追加費用の有無を確認しておくことが大切です。また、費用だけで判断せず、治療方法、期待できる効果、リスクについて説明を受けたうえで検討しましょう。
高齢でも再生医療を受けることは可能ですか?
年齢だけを理由に再生医療を受けられないとは限りません。高齢の方であっても、膝の状態や全身の健康状態などを確認したうえで治療を検討できる場合があります。一方、変形が著しく進行している場合や、痛みの原因が変形性膝関節症以外にある場合には、再生医療が適していないこともあります。重要なのは年齢という数字だけで判断することではなく、画像検査や診察によって膝の状態を評価し、期待できる効果とほかの治療選択肢を比較することです。
治療後に効果を実感できるまでどのくらいかかりますか?
再生医療は、注射直後にすべての痛みが消えることを目的とした治療ではありません。効果を実感する時期には個人差があり、治療方法や変形性膝関節症の進行度、痛みの原因によっても異なります。幹細胞治療に関する研究では数か月単位で痛みや機能の変化を評価しているものが多く、一定期間をかけて経過を見る必要があります。また、注射だけに頼らず、状態に応じた運動療法や体重管理などを組み合わせて膝への負担を調整することも重要です。
変形性膝関節症が治らないと諦める前に専門クリニックへ相談しよう
変形性膝関節症は、傷んだ関節を完全に発症前の状態へ戻すことが難しい病気です。しかし、「治らない」と言われたからといって、痛みを我慢し続ける必要があるわけではありません。
薬物療法、ヒアルロン酸注射、運動療法などの保存療法に加え、症状や希望によってはPRP療法や幹細胞治療などを検討できる場合があります。さらに、変形が進行している方では手術療法が適切な選択肢になることもあるでしょう。
大切なのは、「軟骨が元通りになるか」だけを治療の基準にしないことです。
立ち上がるときの痛みを減らしたい、もう少し長く歩けるようになりたい、旅行や趣味を続けたいなど、患者さんによって治療の目標は異なります。その目標と現在の膝の状態を照らし合わせ、どの治療が適しているかを考える必要があります。
また、同じ変形性膝関節症でも、軟骨の状態、骨の変形、炎症、筋力、体重、脚のアライメント、活動量などは一人ひとり異なります。再生医療を検討する場合も、治療方法だけを先に決めるのではなく、まず現在の膝の状態を正確に把握することが重要です。
「ヒアルロン酸注射を続けても痛い」「手術を勧められたが、ほかの選択肢も知ってから決めたい」という場合は、一度専門の医療機関で相談してみてください。治療を受けるかどうかは、膝の状態と選択肢について十分な説明を受けてから決めることができます。
ご相談・お問合せ
SAクリニックでは、変形性膝関節症による膝の痛みに対し、現在の状態を確認したうえで、一人ひとりに合わせた治療方針をご提案しています。
ヒアルロン酸注射や薬を続けても痛みが改善しない方、手術以外の方法を検討したい方、PRP療法や幹細胞治療について客観的な説明を受けてから判断したい方は、一度ご相談ください。
再生医療を受けることを前提に診療を進めるのではなく、現在の膝の状態やこれまでの治療経過、日常生活で困っていることを確認し、どのような選択肢が考えられるのかを一緒に検討します。
「変形性膝関節症だから治らない」と痛みを我慢し続けるのではなく、これからどの程度歩きたいのか、どのような生活を取り戻したいのかという視点から治療方法を考えることが大切です。
※当院の診療は自由診療です。治療効果には個人差があり、すべての患者さんに同様の効果を保証するものではありません。再生医療によって変形性膝関節症の完治や失われた軟骨の完全な再生を保証するものでもありません。治療の適応、期待される効果、リスクについては診察時にご説明します。
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宮路 啓太 (みやじ けいた)
略歴
- 2013年私立ラ・サール高等学校 卒業
- 2019年神戸大学医学部医学科 卒業 / 加古川中央市民病院 初期臨床研修
- 2021年加古川中央市民病院 循環器内科
- 2024年隠岐医院 漢方内科 / 再生医療専門クリニックにて幹細胞治療に従事
- 2026年SAクリニック 院長
資格・所属学会
【資格】 医師免許(2019年取得) / 内科専門医
【所属学会】 日本内科学会、日本循環器学会、日本整形外科学会、日本抗加齢医学会、日本再生医療学会
監修者メッセージ
再生医療・内科・漢方の経験を融合し、単に痛みを抑えるだけでなく、全身のコンディションを整えて「生涯ずっと自分の足で歩き続ける」ための医療をご提案します。長引くお悩みも諦めずにご相談ください。

